「一国一城の主」「男の甲斐性」などといった言葉に、どうも日本の亭主たちは弱い。
「豪華で優雅なマンションライフ」などという言葉に、奥方たちはご亭主の尻を叩かずにはいられなくなるようだ。
家を売る側も心得ている。
日本語の「マンション」という言葉が象徴的だ。
もともとマンションとは、領主や貴族の大邸宅をさす。
街にはんらんするハイツ、ヴィラ、シャトー、カーサ、パレスなどの呼称にしても、本来の意味はお城であり、宮殿であり、大別荘であり、日本の2DKや3DKのマンションとは何の関係もない言葉である。
しかし、人々はそこに人生最大の買い物、家族の生涯目標を掲げているように思う。
もうずいぶん前のことになってしまったが、私が大学を卒業して、海軍にとられ、士官に任官して初めてもらった月給は76円であった。
その当時、家の建築費というものは坪当たりで50〜100円ぐらいのものだった。
坪当たりの建築費がちょうど大卒初任給と同じくらいだったのだ。
150円ともなれば、もう超高級といってよい家が建った。
下士官クラス、いまでいえばおまわりさんの階層の人は退職金で坪当たり50円ぐらいの家を建てた。
ちょうどおまわりさんの初任給が50円ぐらいの時だった。
ところが現在、2戸建て住宅の建築費は坪当たりにして50万から100万円にも至るだろう。
プレハブの安物にしても坪40万ぐらいにはなる。
初任給が低いのか建築費が高くなったのか、多分その両方だろう。
マンションを購入するにしても、20年30年のローンを組まずに手に入れられる人などほとんどいないだろう。
20年か30年の間、毎月返済して、ボーナスが出れば数十万円をごっそりもっていかれるのである。
稼いだ給料の大半が借金の穴埋めに消えていく。
20年先、インフレがどんどん進んでくれればよいが、ゼローシーリング、ときにはマイナスーシーリングの時代、この債務の返済はどうなるだろう。
しかし、それでも人は「住まい」を欲し、「わが家」を購入するのである。
これはもう、住宅を買い、わが物にすること自体が目的化してしまっていると言われても仕方なかろう。
当たり前のことだが、忘れてはならない。
住まいとはもつこと自体が目的ではなく、そこでどんな生活を営んでいくのかが肝心なのである。
「居は気を移す」といわれ、人間が住まいをつくるように住まいが人間をつくる、といわれる。
こんな冗談を開いた。
新築のマイホームを手に入れた一家がいた。
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